はじめに:リズムと音に悩むすべてのジャズ入門者へ
ジャズを始めたばかりの頃、誰もがこう感じる瞬間があります。
- 自分のタイム感が不安定で、アンサンブルに入ると崩れてしまう
- グルーヴって「何をどうすればいいか」が曖昧で掴めない
- ベースの音が「軽い」「薄い」と感じてしまう
これらは、ジャズ初心者に共通する”根深い悩み”です。コードやスケールの知識を学んでも、なかなか解決しない。だからこそ、その悩みの“根っこ”を抉るように語った人物の声に耳を傾けてほしいのです。
そんなとき、ぜひ思い出してほしい存在がいます。伝説のジャズ・ベーシスト、レイ・ブラウンです。
レイ・ブラウンとは?
フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、オスカー・ピーターソン…。 彼が関わってきたアーティストは、すべて音楽史に名を刻む巨人たち。そんな人々から絶大な信頼を寄せられていたのが、“一音で音楽を支える”ベーシスト、レイ・ブラウンです。
彼が語った一言が、全てを物語っています。
「速く弾けるとか、かっこいいソロを取るとか、そんなのは後でいい。まず“良い音”を出せるようになれ。それが仕事につながるんだ。」
CD・書籍で“レイの音”を体感する
記事を読む前に、レイ・ブラウンの音を実際に“耳で触れる”のがおすすめです。
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これらは、彼の音の“深さ”と“役割”を理解するのに非常に役立ちます。
良い音は、派手さではなく「支える力」
「うまいけど、音がひどい」と言われる理由
あるとき、若いベーシストがレイ・ブラウンの元を訪ねてきてこう言いました。
「先生、僕はベースが上手いんです!」
彼は実際、速く、正確に弾けました。 でも、レイ・ブラウンは即座に言い放ちます。
「上手く弾いてるけど、音がひどい。まず“良い音”の出し方を学び直してこい。」
音の良さとは、テクニックではなく音の存在感と説得力にあります。レイはこの部分を何より重視しました。
なぜ“良い音”が求められるのか?
- アンサンブルの土台を作るのがベーシスト
- ベースの音が悪いと、歌もソロも活きない
- 良い音は“空間に収まる”=音楽の中心に入る
どれほどソロが上手くても、音そのものに芯がなければ、誰からも“また一緒に演奏したい”とは思ってもらえないのです。
「良い音」を出すための基礎力
耳を鍛える
- 自分の音を録音して何度も聴く
- プロの音と比較して“何が違うか”を言葉にする(言語化する)
「音色のイメージ」を持つ
- 自分の理想とする音を思い浮かべながら弾く
- 漠然と“うまく弾きたい”ではなく、“こういう音にしたい”を具体化する
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まとめ:「聴かれる音」こそ、信頼の第一歩
レイ・ブラウンがマスタークラスで何度も強調していたのは、「音色こそ、プロフェッショナルの第一条件」ということです。
「音が良ければ、バンドは君を選ぶ。音が悪ければ、誰も君を呼ばない。」
そして彼はこう言います。
「俺は派手なことなんてしなかった。ただ“良い音”で“いいタイム”をキープし続けただけだ。それで、一生仕事に困らなかった。」
次回:【第2回】レイ・ブラウンが語るタイムとグルーヴの真実 ~“ズレる”ではなく“ズラす”~
「“あの人、タイムいいよね”って、どういう意味?」
「レイドバックってズレること?ノれること?」
次回では、レイ・ブラウンが語った“タイムの芯”と、“グルーヴの会話性”を徹底解剖します。
誰とでも自然に噛み合う“揺れても崩れない”リズム感をどう育てるのか?その鍵は「ズレの中の安定」にありました。
レイ・ブラウンが語る【音色とグルーヴの極意】全3回(リンク)
【Creative Note】
本記事は、レイ・ブラウンが実際に語った講義映像・公開インタビューに基づき、著作権に配慮して教育目的で要約・再構成したものです。演奏録音や発言の文脈はオリジナル資料の解釈に基づき、実践的な内容に置き換えています。
文・構成:浦島正裕(ジャズピアニスト/音楽理論講師)
ピアノと言葉を通して、日々、音楽の仕組みと心の動きの接点を探し続けています。
音楽の音にある「理由」を、常に多角的に考えています。
☆『THE PALM OF A BEAR』/浦島正裕
☆参考にした動画☆